マイル修行とは
航空会社では航空機を利用すると、距離や回数などに応じて「マイル」が貯まるのはご存じでしょう。近年よく耳にする「マイル修行」や「修行僧」にはどんな意味があるのでしょうか？
マイル修行や修行僧の意味
各航空会社には、マイルの獲得状況によって会員のレベルがランクアップしていくシステムがあります。上級会員になると、多くのメリットが享受できると人気です。
「マイル修行」とは、「マイルを貯めるために、航空機を頻繁に利用する行為」を指します。目的は、観光や旅を楽しむことではなく「マイルを貯めて上級会員になること」です。
短期間に多回数または長距離の飛行をすると、経済的にも心身的にも苦痛が伴います。そのため「修行」という言葉が用いられています。同義として、マイル修行をする人を「修行僧」や「修行尼」と呼ぶこともしばしばです。
基準は距離か回数
修行僧は1マイルでも多く獲得するため、あえて遠回りの航路を選んだり短距離の航路を何度も往復したりするケースが少なくありません。マイル修行でランクアップする基準は「回数を稼ぐ」か「距離を稼ぐか」のどちらかです。
年間に一定の距離または回数を利用すればそれが「実績」になり、上級会員だけの特典やボーナスマイルが獲得できます。
仕事の事情で海外に頻繁に行けない人は、国内を日帰り往復して回数を稼ぐ傾向です。逆に時間に余裕がある人は、閑散期に海外路線で距離を稼ぎます。
JALグローバルクラブの概要
「JAL（日本航空）」には「JALグローバルクラブ」という上級会員の組織があります。入会には各種条件があり、階級ごとに違ったサービスや特典を受けられるのが特徴です。
三つの入会条件
JALグローバルクラブは「クラブの規約を遵守すること」及び「JALグローバルクラブのカード所有者であること」に加え、搭乗によって加算される「ポイント」数が入会基準を満たしていることが条件です。
JALには「FLY ON ポイント」という独自のポイントがあります。JALグローバルクラブでステイタスを獲得するための特別なポイントで、対象便へのフライトマイルをもとに自動積算されるのが特徴です。
条件としては、1〜12月までに5万FLY ONポイント（うちJALグループ便2万5000FLY ONポイント）以上を貯めるか、50回（うちJALグループ便25回）以上かつ1万5000FLY ONポイント以上の搭乗実績を獲得する必要があります。
JALカードの種類と特徴
クラブの条件の一つに「JALグローバルクラブのカード（JGCカード）の所持者であること」があげられます。クラブに入会して年会費を支払ってカードを利用すると、前年の搭乗実績にかかわらず上級会員の資格が自動更新され続ける仕組みです。
カードとは、クレジット機能付きの「CLUB-Aカード」「CLUB-Aゴールドカード」「JALダイナースカード」「プラチナカード」を指します。
いずれも「普通カード」よりも、マイルの還元率が高めです。搭乗時のサービスや付帯保険、ボーナスが充実しているため、より快適な空の旅ができるでしょう。
年1回海外に行く人はCLUB-Aカード、飛行機をよく利用する人はCLUB-Aゴールドカード、海外が中心の人はプラチナカードがおすすめです。
ステイタスとサービス
世界にはいくつかの航空会社連合がありますが、JALは「ワンワールド アライアンス」に加盟しています。加盟連合には共通の「ステイタス」があり、加盟会社のどの便に搭乗しても同様の特典が享受できるのが特徴です。
ワンワールドは「エメラルド」「サファイア」「ルビー」の3ランク制です。サファイアはビジネスクラスの各種サービスが、最上級のエメラルドはファーストクラスの各種サービスが利用できます。
これらはJAL独自の「JMB FLY ONプログラム」に対応しており、JALの利用実績によってワンワールドの上級会員ステイタスも自動的に決まる仕組みです。
たとえば、プログラムで3万FOPまたは30回の搭乗をクリアするとJALの「JMBクリスタル」と同時にワンワールドの「サファイア」のステイタスが享受できるようになります。
JALグローバルクラブの主なサービス内容
JALグローバルクラブに入会した人のみが受けられる主なサービス内容を紹介します。搭乗時のサービスはもちろん、提携企業の優待や割引も充実しており旅がより楽しくなるでしょう。
マイレージやラウンジのサービス
クラブの会員になると、初回搭乗ボーナスマイルとして3000マイルが付与されるのが大きなメリットです。
指定の便に搭乗すると「区間マイル×利用運賃のマイル積算率×ボーナスマイル積算率」の計算で「ボーナスマイル」がプレゼントされ、マイルが一気に増加します。
各空港では「ステイタスカード」か「JALアプリ」のいずれかを提示すると、一般人が利用できない「会員専用の空港ラウンジ」が無料で利用できるのもメリットです。ラウンジでは飲み物や新聞、雑誌などが提供されています。
会員ランク別の利用基準は、公式HPを確認しましょう。なお、会員ステータスはJALアプリで表示できるため、ステイタスカードの発行は希望者のみの対応がとられています。
ラウンジサービス ご利用基準（ラウンジサービス） - JAL国内線
チェックインや手荷物のサービス
クラブ会員になると「会員専用予約デスク」や「専用チェックインカウンター」の利用ができます。
予約デスクでは、会員のステイタスに応じて満席時のキャンセル待ちの優先予約や前方座席の指定が可能です。当日は専用のチェックインカウンターにて、スムーズに手続きが済みます。
「受託手荷物無料許容量」が、通常よりアップするのも大きなメリットです。JALグループ国内線では通常プラス20kg以内・JALグループ国際線では通常プラス1個になり、重さや量を気にせずに荷造りができるようになるでしょう。
提携企業での割引や優待
クラブ会員が享受できるサービスは、空の旅に限ったことではありません。JALの提携企業では、会員向けの割引や特典を多数用意しています。
提携ホテルでは宿泊費に割引が適用されるほか、ホテルの直営ラウンジバーの料金が割引になったり、カバーチャージ料金が無料になったりするサービスも豊富です。
「エイビス（AVIS）レンタカー」や「ハーツ（Hertz）レンタカー」など海外のレンタカー会社でも会員向けの特別料金が設定されているため、旅の費用がぐっと抑えられるでしょう。
そのほか、免税店・通信販売・国内外用携帯レンタルサービスなどでも、さまざまな会員サービスが受けられます。
ANA スーパーフライヤーズ会員の概要
「ANA（全日本空輸）」では、三つの条件をすべて達成した会員を対象にステイタスが付与されます。ステイタスに応じ、翌年1年間それぞれに適した優遇サービスが受けられる仕組みです。
一定のステイタスに達した人は「ANAスーパーフライヤーズ会員」の入会資格を得られるのが特徴です。ステイタスの詳細と会員になる方法を解説します。
いつもの空の旅に 新しい感動を | プレミアムメンバーサービス | ANAマイレージクラブ
プレミアムポイントとステイタス
ANAでは、対象期間に三つの獲得条件を満たした会員に対しステイタスが付与されます。
・プレミアムポイントの年間獲得数
・ライフソリューションサービス利用数
・ANAカード・ANA Pay決済額
対象期間はそれぞれ異なりますが、基本「1年間」の利用状況が審査対象です。「プレミアムポイント」はANAのフライト利用で、通常のマイルとは別に積算されます。
「ライフソリューションサービス」は、フライト以外のショッピング利用などを指します。日本発行のANAカードを使い、対象のANA提供サービスをいくつ利用したかが判断基準です。
ANAカードとANA Payは、ステイタスごとに「300万～」の決済ノルマ達成が必要です。
ちなみに、最上位の「ダイヤモンド」の達成後には、ボーナスステージとして「ダイヤモンド+More」という追加ステイタスもあり、こちらも条件があります。
ランクごとに必要な年間プレミアムポイント数は
プレミアムポイントの対象は、ANAグループ便とスターアライアンス、スターアライアンスコネクティングパートナー運航便の搭乗分です。
ポイントは、「区間基本マイレージ×予約クラス・運賃種別ごとの積算率×路線倍率+搭乗ポイント」で計算します。
獲得条件は、年間の獲得ポイント数がブロンズは3万ポイント以上・プラチナは5万ポイント以上・ダイヤモンドは10万ポイント以上です。それぞれのポイントの半数は、ANAグループ利用で獲得したものの必要があります。
前年の1～12月の積算マイルとほかの条件の達成状況で次年度のステイタスが決定し、ポイント数はリセットされたうえで再スタートです。
ANAカードの種類と特徴
条件達成後は「プラチナ」と「ダイヤモンド」ステイタスのみ、特定カードへの入会資格が得られます。
クレジット機能付きカード「ANAスーパーフライヤーズカード」に申し込み、年会費を支払うとステイタス会員になれる仕組みです。
カードは「一般カード」と呼ばれる年会費1万1275円や「ANAスーパーフライヤーズカード」を筆頭に、計8種類から選択できます。
国内外ともに旅行が多い人は、マイル積算率40％で海外旅行傷害保険・国内旅行傷害保険・国内航空傷害保険が三拍子そろった「ANAスーパーフライヤーズ ゴールド」がよいでしょう。
「ANA JCBスーパーフライヤーズカード プレミアム」は契約者は年会費が7万7000円と高めですが、家族がいる場合は4400円（税込）の年会費のみで本会員と同様の特典が享受できる「家族カード」が作れるメリットがあります。
ANA スーパーフライヤーズ会員の主なサービス内容
ANAスーパーフライヤーズ会員になると、ポイントやマイルの特典をはじめ予約時や搭乗時でさまざまな優遇を受けられます。
サービスデスク利用や予約時の優待
ANAスーパーフライヤーズ会員は、一般とは別の「プレミアムメンバー専用サービスデスク」にてチケットの予約を行います。
毎年、運航ダイヤ期間ごとに国内線のチケットが一斉販売されますが、会員は一般販売される前に予約ができるという特典があります。
また、希望する便が満席の場合、ANAウェブサイトやプレミアムメンバー専用デスクで「空席待ち予約」を優先してもらえるのも大きなメリットです。予約時も「座席指定」が優先的にされるため、快適な空の旅ができるでしょう。
チェックイン時の優待やラウンジ利用
搭乗時に空港の一般のチェックインカウンターは大行列になることがありますが、会員は「優先チェックインカウンター」が利用できるのがメリットです。長く待たずとも、スムーズに手続きができるでしょう。
チェックイン後は、ANA国内各空港のラウンジのほか「スター アライアンス・ゴールド」メンバーとして、全世界1000カ所以上の空港内にある「スター アライアンス加盟航空会社」のラウンジが利用できます。搭乗までの時間、料理や飲み物を堪能しながらゆったりとくつろぎましょう。
ポイントやマイルの特典
ブロンズ・プラチナ・ダイヤモンドのプレミアムメンバーの特権として「アップグレードポイントの付与」があります。
前年に獲得したプレミアムポイント数に応じて翌年にプレゼントされるもので、スーパーフライヤーズ会員になっていると4ポイントが上乗せされるのが特徴です。
アップグレードポイントは座席クラスのアップグレードやラウンジの利用などに使えるほか、航空券や旅行商品の支払いに10円単位で使える「ANA SKY コイン」への交換もできます。
また、通常のフライトマイルとは別に、「フライトボーナスマイル」が加算されるのにも注目です。マイルの積算率は、所持するカードやステイタスによって変わります。
まとめ
ほとんどの航空会社では、多頻度客に対して、特別なステイタスを設けています。獲得条件を達成すると一般会員にはないさまざまな割引や特典が得られるため、「マイル修行」にチャレンジする人は少なくありません。
JALやANAは、一定のマイルやポイントを獲得するなどして会員カードを保持すれば、カードを退会しない限りステイタスが生涯維持できる仕組みがあります。制度を上手に活用し、お得で快適な空の旅を末永く楽しみましょう。
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