キャッシュレス・ポイント還元事業とは
「キャッシュレス・ポイント還元事業」は、「2025年までにキャッシュレス決済比率を40%にする」という目標に基づいた国の政策です。消費税率引き上げ後の消費の落ち込みを緩和する目的もあります。2020年6月をもって終了しましたが、どんな政策だったのか見ていきましょう。
対象は電子マネーなどのキャッシュレス決済
「キャッシュレス・ポイント還元事業」は、「対象店舗」において消費者がキャッシュレス決済で支払いをすると、「キャッシュレス決済事業者」から一定のポイントが還元される事業です。
キャッシュレス決済とは、お札や小銭などの現金を使わずに決済をすることを指します。 ポイント還元の対象になるのは、クレジットカード・デビットカード・電子マネー(プリペイドカード)・QRコードなど、購買に繰り返し使える「電子的な決済手段」です。
キャッシュレスの普及により、消費者は財布を持ち歩かなくても気軽に買い物ができるようになります。消費履歴のデータが残るため、家計管理もより楽になるでしょう。 店舗では現金管理の手間やトラブルが減少するうえ、インバウンド消費の増加も期待できます。
還元期間はいつまで?
「キャッシュレス・ポイント還元事業」では、キャッシュレス決済をするとポイントが還元されます。増税による消費者の負担を軽減するとともに、消費の冷え込みを防ぐ目的がありますが、期間が設けられています。
対象期間は2019年10月~2020年6月の9カ月間で、7月以降のポイント還元はありません。 なお、その後はマイナンバーカードとキャッシュレス決済の普及を目的とした「マイナポイント事業」が実施されました。第1弾は2020年9月1日~2021年12月31日で終了していますが、2022年1月からは第2弾がスタートしています。
ポイントの還元率
キャッシュレス・ポイント還元事業のポイント還元率は、5%または2%に設定されており、店舗によって異なります。
個人が運営する中小・小規模の小売店・サービス業者・飲食店の場合、還元率は購入金額の5%です。一方、コンビニやファストフード、ガソリンスタンドなどの「フランチャイズ加盟店」においては、2%が還元されました。
種類別キャッシュレス決済の還元方法
ポイントの還元方法や還元のタイミングはキャッシュレス決済の種類ごとに変わります。いつ・どんな方法でポイントが還元されたのかをチェックしておきましょう。
電子マネーやプリペイドカード
「電子マネー」や「プリペイドカード」は、カードやスマホアプリにあらかじめ現金をチャージしておき、支払い時はチャージ残高より代金が支払われる仕組みです。 これらの決済方法は「前払い式」と呼ばれ、「楽天Edy」やイオンの「WAON」、JR東日本の「Suica」などが代表的です。
還元方法は「ポイントの付与」で、具体的な還元日は業者ごとに異なります。例えば、「nanaco」のポイント還元日は「利用月の翌月15日」で、利用金額に応じた「nanacoポイント」が残高に上乗せでチャージされます。
QRコードなどのスマホ決済
「QRコードによるスマホ決済」は、専用の支払いアプリをスマホにダウンロードし、支払い時にQRコードやバーコードを店頭で読み取ってもらう方法です。 お店が表示するQRコードをスマートフォンのアプリで読み取る、専用の端末にスマートフォンをタッチするという方法もあります。
これらの方法で決済を使う際は、支払いアプリ内にお金をチャージしておく必要があります。または、クレジットカードやデビットカードをアプリに紐づけておき、カード経由で銀行口座から引き落とすという方法も可能です。
代表的な決済アプリは「PayPay」「LINE Pay」「メルペイ」などです。 還元方法は「ポイントの付与」で、還元日は業者ごとに異なります。「PayPay」のポイント還元日が「翌月の20日前後」なのに対し、メルペイは「翌週の月曜日」に設定されていました。
クレジットカードやデビットカード
「クレジットカード」は、クレジットカード会社が代金を立て替えておき、商品やサービスを受け取った後に支払い請求をする「後払い式」です。
還元方法は、還元相当額をカード利用の請求額から相殺する「引落相殺」が一般的です。還元時期は利用月の翌月または翌々月になるケースが多く、カード会社の請求のタイミングによって異なります。 また、引落相殺ではなく「ポイント付与」を行うカード会社も存在します。利用中のクレジットカードがどちらに該当するかを確認しておきましょう。
「デビットカード」は、商品やサービスの購入と同時に、代金が自分の銀行口座から引き落とされる「即時払い式」です。還元方法は「口座充当」が一般的で、後日、口座に還元相当額が振り込まれます。
ポイント還元の対象店舗
ポイント還元はキャッシュレス決済を導入する「一部の対象店舗のみ」で行われているもので、対象店舗以外ではキャッシュレス決済をしてもポイントは還元されません。「ポイント還元対象店舗検索アプリ」などで対象店舗を検索しておきましょう。
ネット通販も対象になる?
キャッシュレス・ポイント還元事業は、ネット通販も例外ではありません。ただし、対象は「中小企業基本法上の中小企業」が原則で、大資本が運営する直営店舗は対象外です。
「ヨドバシカメラ」や「ビックカメラ」のネット通販サイトは、中小企業の定義には当てはまらず、対象店舗からは除外されています。
Amazonでは「マーケットプレイス事業者の商品」のみがポイント還元の対象です。マーケットプレイス事業者とは、Amazonのプラットフォームを利用する「第三の販売事業者」を指します。 楽天やYahoo!ショッピングも同様で、「対象ショップ」でキャッシュレス決済を行うと商品代金の5%が還元されます。
ショッピング時は、商品検索画面にある「5%還元」のタグにチェックを入れて商品を絞り込みましょう。対象店舗には還元に伴う詳細が明記されています。
還元対象にならない商品もある
コンビニはキャッシュレス・ポイント還元事業の対象店舗ですが、「郵便切手類」の購入についてはポイントが還元されません。 有価証券・印紙・証紙・当せん金付証票(宝くじ)・物品切手等(商品券・プリペイドカード)も対象から除外されています。
新築住宅や自動車(新車・中古車)は大きな買い物のため、ポイントの大量獲得を期待してしまいますが、残念ながら還元対象ではありません。収納代行サービスや代金引換サービスに対する支払いも同様です。 対象店舗の商品すべてがポイント還元対象ではないことを覚えておきましょう。
還元金額には上限も
各決済事業者では「還元金額」に上限を設けています。業者ごとに「1回あたりの還元上限」や「指定期間あたりの還元上限」が設定されており、上限を超えた分の還元は行わないというものです。
「イオンカード」や「セゾンカード」におけるひと月あたりの還元上限は1万5000ポイントで、これは5%還元の対象商品を30万円分購入した場合に相当します。
電子マネーの「楽天Edy」の還元上限は1回の決済につき2500ポイント、「Pay Pay」はひと月あたり2万5000ポイントです。 「無制限に還元される」と勘違いしてお金を使うと、損をしてしまう可能性もあります。還元の上限を超えそうな場合は、複数の決済方法を使い分けるのが賢明でしょう。
知っておきたいポイント還元の注意点
「対象店舗でキャッシュレス決済をしたのにポイントが還元されなかった」という事例も出てきています。取りこぼしなくポイントを獲得するために、決済サービスや店舗ごとのルールを把握しておきましょう。
決済方法や還元率はショップによって違う
キャッシュレス決済方法は、クレジットカードや電子マネー、QRコードとさまざまですが「還元対象となるキャッシュレス決済手段」はお店ごとに決められています。
海外発行のクレジットカードなど「事業に参加していないキャッシュレス決済手段」を使った場合、ポイント還元されないケースがほとんどです。確実にポイントを獲得するためにも、各決済事業者のサイトを確認してから支払いを行いましょう。
2%と5%のどちらの還元率が適用されるかは、店舗によって異なります。税込価格に対してポイント還元するのが原則ですが、一部の決済手段では「税抜価格」に対してポイント還元される場合があることも覚えておきましょう。
決済サービスにより事前登録が必要な場合も
多くのキャッシュレス決済は事前登録なしでポイントが還元されますが、中には決済事業者のサイトに登録を行わなければポイントが還元されないものも存在します。
特に、SuicaやPASMOをはじめとする「交通系ICカード」は、会員登録が必須です。 多くのクレジットカードは事前登録なしでOKですが、株式会社オリコの「オリコカード」に関しては「eオリコサービス・オリコポイントゲートウェイ」の利用登録が必要とされています。
まとめ
キャッシュレス・ポイント還元事業がスタートしたものの「どこで・どのくらい還元されるか」をしっかりと把握せずにキャッシュレス決済をしていた人も多いのではないでしょうか?
ポイント還元は無制限に行われるわけではなく、決済サービスごとに上限があります。店舗や決済事業者のルールを確認しておかないと、思わぬ損をしてしまうかもしれません。
キャッシュレス・ポイント還元事業は2022年3月現在は行われていませんが、マイナポイントの第2弾が実施されています。キャッシュレス決済を利用している人は、要件をチェックしてみましょう。