ポイント運用とポイント投資の比較
クレジットカードなどで得たポイントを投資して、自分の元手を増やす行為を「ポイント投資」と呼びますが、厳密には投資の方法によって「ポイント運用」との2種類に大別されます。
疑似運用型ともいわれるポイント運用
ポイント運用は、ポイントを運用会社に預けて運用してもらうサービスです。現金化せずに「ポイントのまま」で投資ができることから「疑似運用型」とも呼ばれています。
実際の投資信託や株式の値動きに連動して、ポイントが増減する仕組みです。ポイントの価値が減ってしまうこともあれば、増えることもあります。
通常の投資は証券口座を開設して金融商品を購入する必要がありますが、ポイント運用は元手となるポイントさえあれば現金は必要ありません。 ポイント運用会社が用意したコースを選ぶだけで始められます。
また、運用中のポイントは基本的に、いつでも好きなときに引き出して使える点も魅力です。
現金投資型といわれるポイント投資
ポイント投資は貯まったポイントを「現金化」し、実際の株式や投資信託の買い付け代金として利用します。別名「現金投資型」と呼ばれ、投資そのものが体験できるのが特徴です。
投資を始めるにあたり、証券口座を新たに開設する必要があります。購入できる金融商品の種類は、実際の投資とほぼ同じです。リターンはポイントではなく「現金」で受け取ります。
投資初心者は最初にリスクが少ないポイント運用で疑似体験し、慣れてきたところでポイント投資や本物の投資を始めるパターンが多いようです。
ポイント運用のメリット
貯まったポイントの使い道に迷ったとき、ポイント運用を選択する人が増えています。具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?
ハードルが低い
ポイント運用は、誰でも気軽に利用できるハードルの低さが魅力です。現金による投資は大きく損をしてしまうケースがあり、初心者や資産が少ない人はなかなか手が出せないのが現実でしょう。
一方で、ポイント運用は現金を使わずにポイントだけで投資を行います。たとえポイントが目減りしても、お財布に大きなダメージはありません。選択できるコースはそれほど多くなく、投資の知識が少ない人でも迷うことはないでしょう。
資産運用の勉強や練習のツールとしても活用でき、実際の投資をする前の予行演習にはぴったりです。
ポイントを有効活用できる
ポイント運用の大きなメリットは「ポイントが有効活用できる」点です。ポイントが貯まると、消費のためについ無駄なものを購入してしまったり、使い道が決まらず失効させてしまったりという人は意外に多いものです。
特に「期間限定ポイント」など期限切れで失効してしまうものは、期限までに使い切って初めてお得になります。ポイント運用をすれば、銀行の口座から貯金を投資しているのと同じ感覚です。
元手となる資金(ポイント)に、有効期限はありません。 期限がなければ、ポイントの不本意な失効がなくなります。慌てて使う必要もなく、無駄遣いが減るでしょう。資産運用や投資の勉強もできて一石二鳥です。
ポイントは普段の生活の中で自然と貯まります。「投資のために資金を準備しなければ…」と意気込むことなく、無理のない範囲でできるのは有効な活用方法といえるでしょう。
口座開設が不要
通常、投資信託や株を買い付けする際は「証券口座」を開設しすることが前提です。開設時には運転免許証や健康保険証などの本人確認書類のほか、マイナンバー・印鑑・金融機関口座が必要になります。
証券口座を開設するだけでも数日間かかり、書類に不備があれば1週間以上の日数を要するでしょう。
その点、ポイント運用は口座開設が不要です。サイトの会員IDとポイントさえあればその日からすぐに運用がスタートできます。
ポイント運用のデメリット
ポイント運用はメリットばかりのように思えますが、リスクはゼロではありません。あくまでも投資の疑似体験であり、資産として相続できないのもネックです。
当然ながら減るリスクも存在
現金を使わない投資とはいえ、投資は投資です。元金は保証されておらず、運用中は実際の投資信託や株式の値動きに連動してポイントの価値が増減します。
マイナスにはなりませんが、預けたポイントが減ってしまうリスクもあることを頭に入れておきましょう。
特に、短期利益を狙おうとすると損をする傾向があります。 多少価値が下がったとしても、長期間の成長性に期待して気長に待つ姿勢が大切です。また、ポイント運用は現金が投入できないため、運用できる額が決まっています。「大きな損はしないが、大きなリターンも見込めない」のが特徴です。
運営会社側のルール変更や破綻の可能性
注意したいのが、運営会社側のルールが変更される可能性があることです。ポイントが反映されるまでに時間を要したりポイントの引き出しに手数料がかかったりと、改定が利用者にとって不利になるケースも少なくありません。
また、運営会社が破綻し、地道に積み上げたポイント資産を失うリスクにも要注意です。実際の投資では、証券会社は「客から預かった資産」と「証券会社自身の資産」を別々に管理しています。
会社が破綻しても客の資産には影響がなく、資産の返還を求めることが可能です。 しかし、ポイント運用にはそのような制度や補償が義務付けられていないため、破綻時はポイントがなくなってしまうかもしれません。
運用を行う前に、各運営会社の「利用規約」を必ず確認しましょう。
相続できない
投資では口座開設の名義人が死亡した場合、相続手続きを経て、口座内の投資信託や現金を相続人に移管できます。
一方で、ポイント運用では、ポイントの「譲渡」や「相続」はできません。利用者が亡くなれば、ポイントはそのまま消滅します。
ポイントのままでの相続は不可ですが、ポイントで交換した商品は当然ながら相続が可能です。運用しているポイントが増えた場合は、きりのよいところで引き出して商品の購入やサービスの利用で使い切るのが賢明でしょう。
ポイントサービスの中には、ポイントを家族間で共有できるものもあります。このケースでは、運用をやめてポイントを移す作業が必要です。
主なサービス
近年はキャッシュレス化により、あらゆる場所でポイントが貯まるようになりました。ポイント運用のサービスをスタートさせる企業も増えており、投資の疑似体験をしたい初心者には絶好の機会ともいえます。
ポイント運用を手掛ける主要会社をいくつか紹介しましょう。
THEOとドコモの運用 dポイント投資
dポイント投資は「NTTドコモ」のdポイントを「運用ポイント」に変え、100ポイント単位で投資ができます。期間・用途限定のdポイントは、利用できません。
「おまかせ運用」と「テーマ運用」の2種類に大別でき、自分のニーズに合ったコースを選べます。 おまかせ運用は資産配分の異なる「アクティブ」と「バランス」の2種類です。
テーマ運用の投資対象は10コースほどで、「クリーンエネルギー」や「コミュニケーション」「ヘルスケア」などがあります。初心者から上級者まで幅広く使えるのが特徴でしょう。
資産運用シミュレーションを使うと「株式会社お金のデザイン」が提供するAI搭載のロボアドバイザー「THEO+docomo(テオプラスドコモ)」が資産運用時の試算をしてくれます。
バランス型投信で運用 au PAYポイント運用
「au PAY ポイント運用」は、共通ポイントの「Pontaポイント」を使って投資体験ができるサービスです。
これまで、コード決済サービス「au PAY」やクレジットカード「au PAY カード」の決済では、金額に応じた「au WALLET ポイント」が付与されていましたが、2020年5月より、Pontaポイントへと統合されました。
運用ポイントは、世界分散投資商品の「auスマート・プライム(高成長)」の価額増減に連動して更新されます。ポイントが増える時期を見極めるのは難しいため、毎月一定数を地道に積み立てて購入価格を平準化するのがコツです。
運用に慣れてきたら、100円から始められる「auの資産運用」にステップアップするとよいでしょう。ポイント運用で培った積み立ての感覚を長期積立型の「auのiDeCo」で生かし、節税を目指すのも有効です。
セゾンの永久不滅ポイント運用サービス
「セゾン」の永久不滅ポイント運用は「投資信託コース」と「株式コース」に大別されます。
投資信託コースは、東証株価指数に連動する「日本株(TOPIX)コース」を筆頭に「アメリカ株コース」「アクティブコース」「バランスコース」など、計6種類のラインナップです。
株式コースは永久不滅ポイントを「ストックポイント」に交換してから利用します。レートは1ポイント(永久ポイント)=4ポイント(ストックポイント)です。
ストックポイントは、「カルビー」や「日清食品」など企業の株価に連動して増減するのが特徴です。ポイント数を満たせば、1株として実際の株式に交換することもできます。
初心者で元をあまり減らしたくないという人は、投資信託の「バランスコース」を選ぶのがよいでしょう。値動きの少ない国内債券が中心で、ポイントの増減率は年間3%前後です。
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2コースから選べる ポイント運用 by 楽天PointClub
楽天PointClubのポイント運用は、楽天サービスや買い物の利用で貯まった「楽天ポイント」を活用して行う形式です。
ポイントの増減は「楽天・インデックス・バランス・ファンド」の基準価額の値動きと連動しており、株式重視型を反映する「アクティブコース」と債券重視型を反映する「バランスコース」の2種類から選べます。
運用できるのは通常ポイントのみで、期間限定ポイントは対象外です。増えたポイントは手数料なしで引き出せますが、増えたポイントで「楽天証券」の「ポイント投資」にチャレンジしてみるのもよいでしょう。
【楽天PointClub】:ポイント運用| ほったらかしで増えるかも!?
ポイント運用と税金について
通常、投資で運用益が出た場合は、利益分に対して税金が課せられます。ポイント運用で出た利益は課税の対象になるのでしょうか?
個人によるポイント運用は原則非課税
「所得税法」で課税されるべき所得は「所得区分」を明確にする必要がありますが、ポイントでの運用は実際のところ直接的な法令などはありません。
ただ、現時点ではクレジットカードの利用や物品の購入で得られるポイントは「法人から消費者への贈与」と見なされ、所得区分では「一時所得」に該当します。
一時所得の非課税枠は50万円であるため、50万円以下の運用益であれば税金はかからないのが通常です。「国税庁」によると、個人が獲得したポイントに関しては原則として確定申告の必要はありません。
今後、キャッシュレス化が進み、ポイント運用で得た利益についてのルールが新たに制定される可能性があります。
No.1907 個人が企業発行ポイントを取得又は使用した場合の取扱い|国税庁
現金での運用は課税対象
注意したいのが、ポイントを現金化して「ポイント投資」をした場合です。元手はポイントですが、リターンは「現金」で受け取ることになるため、現金での投資と同様に運用益に税金が課せられます。
これは、ほかの所得とは別にポイントの投資者が支払わなければならない「源泉分離課税」です。得た金額の20.315%(所得税が15.315%・地方税が5%)を納めなければなりません。
「ポイント運用」と「ポイント投資」は一見似ていますが、税制上は違いが大きいものです。ポイントを賢く使い、利益に対する税金まで考えるのであれば「ポイント運用」がよいでしょう。
まとめ
ポイント運用とポイント投資は、どちらも元手はポイントです。ただ、投資できる先やかかる税金などが大きく異なります。
使い道が決まらないポイントがあれば、証券口座の開設なしで始められる「ポイント運用」にチャレンジしてみましょう。初心者は投資信託や株の仕組みが学べるうえ、上手くいけばポイントを倍に増やせます。
ポイントを貯めて運用して元手を増やすことへの関心が高まっている昨今、多くの会社で簡単にできるポイント運用サービスを導入し始めているところです。各社を比較しながら、自分が取り組みやすいコースを探してみましょう。