上級ステイタス資格獲得を目指す理由
各航空会社のマイレージプログラムには、一般会員よりもランクが上の「上級会員」が存在します。JALでは「サービスステイタス」、ANAでは「プレミアムメンバー」と呼ばれており、ランクが上がれば上がるほど手厚いサービスが受けられるのが特徴です。
日系航空会社では現状取り入れられていませんが、海外系航空会社では「ステイタスマッチ」を採用しているところもあります。
上級会員ならではの特典
上級会員になると、搭乗前後やマイレージで優遇が受けられます。サービス内容はステイタスによって異なりますが、予約時は専用のサービスデスクが設けられたり、予約や空席待ちが優先されるのがメリットです。
空港には、「上級会員の専用チェックインカウンター」が設置されています。混雑を避けてスムーズに手続きできるうえ、「手荷物の優先受け取り」や「受託手荷物無料許容量の優待」などのサービスも享受できるでしょう。
フライトまでのひとときを、ワンランク上の「空港ラウンジ」でゆっくり過ごせるのも魅力です。航空会社では、一般会員向けのラウンジとは別に、上級会員向けの専用ラウンジが用意されています。入場には、ステイタスの提示が必要です。
また、上級会員になると「フライトマイルの積算率」がアップし、効率よくマイルが貯まるようになります。ステイタスの維持には地道な積算が欠かせませんが、上級サービスはそれだけ価値のある充実度です。
ステイタスマッチで特典の幅が広がる
海外の航空会社の中には、「ステイタスマッチ」を導入しているところも多くあります。マイレージプログラムの上級会員資格を保有する場合、他の航空会社やホテルグループのプログラムにおいても上級会員資格が体験できるシステムです。
たとえば、デルタ航空には、2種類のステイタスマッチがあります。デルタの上級ステイタス「メダリオン会員」向けに提供されているのが「プレミアステータスマッチ」です。参加条件を満たした場合に限り、ユナイテッド航空の上級ステイタス「マイレージプラスプレミア」が獲得できます。
ほかマイレージの上級会員で、デルタのスカイマイルに未加入の人向けに行われているのが「スカイマイル・ステータスマッチ・チャレンジ」です。
現在の他社ステイタスに応じたスカイマイルのステイタスを3カ月間無料で体験できます。期間中にメダリオン会員のステイタス基準を満たせれば、そのまま上級会員としての入会も可能です。
ステイタスマッチで得られた資格には期限があり、優待が永久に続くわけではありません。しかし、さまざまな航空会社でエリートサービスが享受しやすくなり、特典の幅が広がるのは大きなメリットでしょう。
ANAだけのサービス
ANAでは、プレミアムメンバーや一部の多頻度顧客に対し「特別なサービス」を用意しています。「ミリオンマイラープログラム」と「アップグレードポイント」は、ほかの航空会社にはないANA独自のものです。
アップグレードポイント
「アップグレードポイント」は「翌年度のプレミアムメンバー」に進呈される特別なポイントです。「座席のアップグレード」や「空港ラウンジの利用」「ANA SKY コイン」との交換に使えます。
有効期限は「4月1日~翌年3月31日」と短く、翌年への繰り越しはできません。1~12月の間に獲得した「プレミアムポイント数」によって、付与数が決まります。
プレミアムポイントは、メンバーのステイタスを決めるためのポイントで、フライトのたびにマイルとは別に積算されるものです。
ポイント自体は、特典との交換には使えません。期限付きであっても、アップグレードポイントの付与はメリットでしょう。
ミリオンマイラープログラム
ANAのマイルには、フライトで貯まるフライトマイルのほかに、ANAマイレージクラブ入会時から現在までの「総飛行距離」で積算される「ライフタイムマイル(LT)」があります。
ANAグループ便で積算される「ANAライフタイムマイル」が50万LT以上で提供されるプログラムです。100万LTを超える「ミリオンマイラー」は、一生涯にわたり特典が享受できるようになります。
100万LTマイル以上達成時点では、「獲得日から36カ月後の月末」に設定されているマイルの有効期限がなくなります。
さらに、本来プラチナメンバー以上だけが申請できる「スーパーフライヤーズカード(SFC)」の申請が随時可能です。
200万LTマイル以上では、「生涯にわたるANA SUITE LOUNGEの利用」が約束されます。
上級会員になるにはポイントが必要
通常、フライト利用ではフライトマイルが貯まりますが、マイルとは別に「ポイント」が積算されます。マイルのように特典に交換ができず、「会員のステイタスを決定する基準」として用いられるのが特徴です。
上級会員プログラムは航空会社ごとに違う
上級会員プログラムでは、年間に獲得した「ポイント数」によって翌年の会員ステイタスが決まります。基準やルールは、航空会社ごとに異なるのが特徴です。
年度ごとにすべてのポイントがリセットされる航空会社もあり、獲得年の翌年以降も、ステイタス基準のノルマを達成し続ける必要があります。
上級会員を目指す際は「ステイタスの維持の難易度」や「ポイントの獲得条件」をよく考慮しましょう。
ただし、「特定クレジットカードの発行」や「上級ステイタス限定サービスの入会」で、一定ランクの上級会員の資格が自動的に付与されるものもあります。
ステイタスを維持するのは、金銭的にも時間的にも容易ではありません。会員の特典を活用するのも一つの方法です。
JALのポイントの仕組み
JALのプログラムは「FLY ON プログラム」です。上級ステイタスは「クリスタル」「サファイヤ」「プレミア(JGC会員のみ)」「ダイヤモンド」の4ランク制で、年間で獲得した「FLY ON ポイント」を基に、翌年のランクが決まります。
ポイントは1年ごとにリセットされ、翌年への繰り越しはできません。
・FLY ON ポイント=「フライトマイル」×「FLY ON ポイント換算率」×「搭乗ボーナスFLY ON ポイント」
フライトマイルは、「区間マイル」に、利用運賃や予約クラスごとの「マイルの積算率」を掛けて計算します。
FLY ON ポイント換算率とは、路線ごとに定められた運賃倍率です。日本国内線が「2倍」・アジア・オセアニア線及びウラジオストク線が「1.5倍」・その他の国際線が1倍となっています。
「搭乗ボーナスFLY ON ポイント」は、「利用運賃」ごとの設定です。0~400ポイントの間で積算され、普通運賃や往復割引は400ポイントがもらえます。一方で「スーパー先特」や「特典航空券」などは0ポイントです。
ANAのポイントの仕組み
ANAでは、搭乗実績やANAサービスの利用状況などに応じて、マイルとは別に「プレミアムポイント」が積算されます。
年間で獲得したプレミアムポイント数で、翌年のランクが決まり、各ランクに応じたサービスが受けられる流れです。会員ランクは1年ごとにリセットされます。
上級会員のプレミアムメンバーは「ブロンズ」「プラチナ」「ダイヤモンド」に大別されます。フライト利用によるポイントの積算式は以下の通りです。
・プレミアムポイント数=「フライトマイル」×「路線倍率」×「搭乗ポイント」
ポイント計算の基になるフライトマイル・路線倍率・搭乗ポイントの定義は、JALとほぼ同じです。
このほか、2021年12月からはANAサービスの利用数や対象ANAカードでの支払い総額なども条件として加わっています。
各アライアンスにもランクが存在
「アライアンス」とは、航空会社が加盟する「航空連合組織」のことです。各航空会社のランクとアライアンスの会員ランクには、互換性があります。
各航空会社の上級会員はアライアンス加盟航空会社を利用する際にも、参加中のマイレージの上級サービスと同じようなさまざまな優待が受けられます。
スターアライアンス
「スターアライアンス」は、全26社から成る世界最大の航空連合で、ANAやユナイテッド航空、エアチャイナなどが加盟しています。
スターアライアンスのランクは「シルバー」と「ゴールド」の2ランク制で、各加盟航空会社のマイレージプログラムの上位クラスに対応しています。
・ANA ブロンズサービス会員→スターアライアンス シルバー
・ANA プラチナ・ダイヤモンドサービス会員、スーパーフライヤーズ会員→スターアライアンス ゴールド
シルバーには、予約時や空港での「空席待ち」が優先される特典があります。ゴールドになると、「優先チェックイン」「優先搭乗」「手荷物許容量の追加」などのサービスが追加されるため、より快適な旅が満喫できるでしょう。
ワンワールド
「ワンワールド」は、JALやブリティッシュエアウェイズなどが加盟する航空連合で、14社のメンバーから成り立ちます。
ワンワールドのエリートステイタスは、「エメラルド」「サファイヤ」「ルビー」の3ランク制です。加盟航空会社の上級会員にはエメラルド・サファイア・ルビーいずれかのワンワールド エリートステイタスが自動的に付与されます。
・JAL クリスタル会員→ルビー
・JAL サファイヤ会員→サファイヤ
・JAL ダイヤモンド会員・JGCプレミア会員→エメラルド
空港ではチェックインから到着までの間に、さまざまな優待サービスが受けられます。空港では「oneworld Priority」のロゴの付いた案内表示に従いましょう。
スカイチーム
「スカイチーム」は、全19社から成るアライアンスで、デルタ航空や大韓航空、チャイナエアラインなどが加盟しています。
スカイチーム上級会員は「スカイチームエリート」と「スカイチームエリートプラス」の二つです。たとえば、デルタ航空の上級会員「メダリオン」の場合、スカイチームのいずれかの資格が自動的に付与されます。
・シルバーメダリオン→スカイチーム・エリート
・ゴールド・プラチナ・ダイヤモンド→スカイチーム・エリートプラス
ワンランク上のスカイチームエリートプラスになると、空港ラウンジの利用から優先搭乗まで、フライトにおけるすべての特典が享受できるようになります。
ステイタスを維持できるクレジットカード
ステイタスを維持し続けるのは、時間・体力・金銭的に大変です。JALやANAには、「ステイタスが維持できるクレジットカード」があるのをご存じでしょうか?年会費を支払い、カードを保有している間は、上級会員とほぼ同等のサービスが受けられます。
JAL グローバルクラブカード
JALには、JALグループ便を多く利用する顧客に向けた「JALグローバルクラブ(JGC)」という会員組織があります。
JGC会員になり、毎年会費を支払い続ければ、搭乗実績に関係なく「ワンワールドのサファイヤ」以上のステイタスが維持できるのが特徴です。
たとえば、JMBクリスタル会員は、JGCに入会すると「JGCクリスタル」に切り替わり、ワンワールドの「サファイヤ」の特典が享受できるようになります。
入会資格があるのは、FLY ON プログラムで一定の実績を納めた会員のみです。入会時は「JALグローバルクラブカード」に指定された以下のカードを発行する必要があります。
・CLUB-Aカード
・CLUB-Aゴールドカード
・JALダイナースカード
・プラチナカード
2020年分までは入会時に発行するカードの年会費がそのままJGCの会費とされていましたが、21年からは別途マイルの引き落としとなります。
ただし、JALカード・CLUB-Aカード・CLUB-Aゴールドカード・JALダイナースカード・プラチナは免除され、これまで通りカードの年会費のみで問題ありません。
スーパーフライヤーズカード
SFCは、ANAプレミアムメンバーのうち「プラチナメンバー」と「ダイヤモンドメンバー」のみ申請できる特別なカードです。
カードを申請すると「SFC会員」となり、カードを保有している間は搭乗実績に関係なく「プラチナ」とほぼ同等のサービスが受けられるようになります。
SFCは、年会費1万1275円(税込)の「ANAスーパーフライヤーズカード(一般)」をはじめとする8種類のラインナップから選択が可能です。
まずは、年間5万ポイント(ANAグループ便2万5000ポイント)のプレミアムポイントを獲得し、プラチナメンバーになることを目指しましょう。
スーパーフライヤーズ会員の特典 | プレミアムメンバーサービス | ANAマイレージクラブ
すぐに上級会員になれる提携カードも
JAL グローバルクラブカードやSFCは一度発行すれば長くステイタスが維持できますが、カードの申請資格を得るまでの道のりに労力を要します。「すぐに上級会員になりたい」という人は、「提携カード」の発行を検討しましょう。
デルタ航空
デルタ航空の上級会員は「メダリオン」と呼ばれ、「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」「ダイヤモンド」の四つのランクに分かれます。
通常は、年間における「MQM(メダリオン会員資格取得必要マイル)」と「MQS(メダリオン資格取得対象区間)」の獲得数で毎年ランクが変動します。
ただ、22年現在は新型コロナウイルスの影響で、ステイタス維持の条件が通常と異なります。くわしくは公式サイトを確認しましょう。
なお、アメックス提携のカードの保有者には「入会後1年間」のみ、メダリオン会員の資格が自動的に与えられます。
・デルタ スカイマイル アメリカン・エキスプレス・カード→シルバーメダリオン
・デルタ スカイマイル アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード→ゴールドメダリオン
デルタ航空スカイマイル・ステータスマッチ・チャレンジ | デルタ航空
ハワイアン航空
ハワイアン航空には「Pualani Gold」と「Pualani Platinum」の二つのエリートステイタスがあります。
Pualani Goldは「年間で2万マイルまたは30区間」、Pualani Platinumは「4万マイルまたは60区間」のフライトを達成したときに獲得できる資格です。(22年現在、新型コロナウイルスの影響で対応に変更あり)
アメリカの富裕層向けクレジットカード「ラグジュアリカード」と提携があり、上位カードを発行するとハワイアン航空のエリートステイタスが無条件に付与されるのが特徴です。対象は、3種類のラインナップのうち上位2種になります。
・Mastercard Black CardTM→Pualani Gold
・Mastercard Gold CardTM→Pualani Platinum
まとめ
航空会社の上級ステイタスを得るのは大変な道のりですが、優先搭乗やマイルの積算率アップ、空港ラウンジの利用など、数多くの特典が享受できるプログラムです。
マイレージのステイタス獲得時にはアライアンスの上級ステイタスも自動的に提供される仕組みのため、特典の幅はさらに広がります。「ステイタスの維持が難しい」という人は、JGCカードやSFCの発行を目指しましょう。