より安全になるクレジットカード決済
キャッシュレス化の推進により、以前にも増してクレジットカード決済を利用する人が増えています。クレジットカードは、データの読み取り方の違いによって「ICチップ付きカード」と「磁気カード」の2種類に分かれるのをご存じでしょうか?
カード上部の金色のチップがICチップ
近年発行されるクレジットカードには、カード券面に金色の「ICチップ」が埋め込まれているのが特徴です。ICとは集積回路(Integrated Circuit)の略で、チップの中には暗号化された膨大なカード情報が記憶されています。
利用時は専用のリーダーにカードを挿入し、「4桁の暗証番号」による本人確認を経て決済を行うのが一般的です。
一方、従来の磁気カードは券面の「磁気テープ」にカード情報が直接転写されており、リーダーにカードを通過させて決済をします。
ICチップは磁気カードに比べて記録できる情報量が格段に多く、情報を不正に読み取る「スキミング」にも強いのがメリットです。カードの偽造は、ほぼ不可能といわれています。
IC化が進む背景
IC化が進む背景には2018年6月に「割賦販売法(かっぷはんばいほう)」が改正され、クレジットカードのセキュリティ対策が強化されたことが挙げられます。
加盟店側で不正利用をされにくいICカード読み取り端末を用意することや、カード情報を電子データとして記録・保存・処理などをしないようにすることなどが義務付けられました。
同法により、カードの加盟店は20年3月末までに「カード決済端末のIC化」が必須となったのです。実際のところ、完全な普及は22年にずれ込むと予想されています。
イギリスやEUなどの一部の国々はカードのIC化が日本以上に進んでおり、磁気タイプでは決済ができないケースもあるほどです。日本はIC化対策に後れをとっており、カード不正利用の標的になりやすいのが実情でしょう。
不正利用等の被害に遭うリスクが減少
ICチップ付きカードは磁気カードに比べ、安全性が高いとされています。海外では磁気カードの不正利用や偽造問題が相次いだため、IC化への転換を迫られたといえるでしょう。
磁気カードの場合、「スキマー」を使って他人の磁気テープからカード情報を盗み取れます。盗んだ情報を所持するカードに貼り付ければ、容易に不正利用ができてしまうのです。
実際、イギリスではIC化の完了後、偽造カード被害額が約70%、盗難・ 紛失カード被害額が約60%も減少したとの統計も出ています。
ICチップはスキミングのリスクはゼロではありませんが、情報の盗用には高い技術が必要です。認証の仕組みが高度化・複雑化しているうえに、暗証番号が格納されているため盗用は困難でしょう。
さらに、決済端末を導入する店舗側に対しては「カード情報の非保持化」やグローバルセキュリティ基準である「PCI DSS準拠」により、一定のセキュリティ条件を満たすことが要求されています。
ICチップ付きカードの使い方
ICチップ付きカードは消費者はもちろん、店側にとっても安全性の高い決済方法といえます。サインの必要がないため、よりスムーズに決済が済むでしょう。チップ部分の汚れや傷には注意が必要です。
サインではなく暗証番号を入力して決済
従来の磁気カードは、店舗の専用リーダーにカードを通した後、「サイン」によって本人確認を行います。実際、カード裏面のサインを確認されるケースは少なく、第三者が本人の筆跡を真似してサインすれば不正利用も難しくはありません。
ICチップ付きカードの場合、端末にカードを挿し込み、サインの代わりに「4桁の暗証番号」を入力する形がほとんどです。間違った暗証番号を複数回入力すると、セキュリティ機能によりカードがロックされるため、盗難された場合も不正利用につながる可能性は少ないでしょう。
いったんロックがかかると、カード会社に連絡して「利用再開手続き」や「カードの再発行」など所定の手続きが必要です。
なお、ほとんどのICチップ付きカードには、磁気ストライプが搭載されています。店舗の決済端末がICカードに対応していない場合はICチップ付きカードの磁気ストライプをスワイプし、サインによる本人確認を行うのが一般的です。
傷や汚れがあると読み取れない場合も
ICチップに傷や汚れがあると、決済がうまくいかない可能性があります。表面がメッキ加工されているため錆びるケースは稀ですが、汚れが目立ってきたら「メガネ拭き」のようなやわらかい布で優しく拭き取りましょう。
汚れがひどい場合は、布に少量の水を含ませて擦ります。先の尖ったものやざらついたものでゴシゴシ擦るのはNGです。
また、磁気ストライプは、スマホ・PC・テレビ・ラジオ・財布の磁石留め具などの「強い磁気を発するもの」の近くに置かないようにしましょう。磁気不良を起こし、使えなくなるおそれがあります。
まとめ
「最近、お店でカードをスワイプする機会が減った…」と感じていた人も多いのではないでしょうか?ICチップは高いセキュリティ機能を有しています。従来の磁気カードよりも多くの情報が記憶できるうえ、情報を高度に暗号化できるのがメリットです。
とはいえ、スキミングや不正利用のリスクはゼロではありません。カードの管理には、十分注意する必要があります。