現在のクレジットカードの仕組み
以前はICチップなしのカードが主流でしたが、現在のカードにはICチップが搭載されています。基本的なカードの仕組みと、磁気ストライプとICチップが併用されている理由について解説しましょう。
磁気ストライプとICチップ両方を搭載
新しく発行されているクレジットカードには、裏面にある黒い帯の「磁気ストライプ」と、表面の四角い「ICチップ」が搭載されています。
ICチップが搭載されるようになったのは、クレジットカードのセキュリティ向上を目的とする「改正割賦販売法」によるIC義務化のためです。加盟店も、順次ICカードが使える決済端末に変更しています。
現在は多くの店で磁気ストライプをスワイプする光景が見られなくなり、ICカードを差し込む方式に変わっています。
ICカード非対応店の存在等が理由
IC化したはずのクレジットカードに磁気ストライプが搭載されているのは、ICカードに対応していない店があるためです。2020年3月を目標としていたクレジットカードのIC化完了は、22年にずれ込む見込みとなっています。
ただし、IC非対応の店はかなり減ってきています。日本では15年以降、「ライアビリティシフト」が適用されるようになりました。IC決済非対応店舗で不正利用があった場合に債務責任を加盟店が負う仕組みで、店側のリスクも高いのです。
しかし、IC化が完了していないのは、日本だけではありません。世界にはICカードに対応していない国もあります。ほとんどのエリアでIC化が進むまで、磁気ストライプが搭載される可能性は高いでしょう。
ICチップ義務化の背景
なぜ、クレジットカードにICチップが搭載されるようになったのでしょうか?ICチップと磁気ストライプの違いや、主な決済方法についても知っておきましょう。
クレジットカード偽造による被害の防止
磁気ストライプやICチップには、「カード情報」が入っています。磁気ストライプは「スキミング」と呼ばれるデータ情報の盗難に弱く、偽造されやすいのが特徴です。
カードに専用の装置を近づけて情報を盗み出すスキミングは、海外でも被害が多発しています。カードを渡したときに情報を取られたり、ATMにスキミング用の機械を取り付ける犯罪者がいたりと、気づかないうちにカード情報が盗み取られる危険があるのです。
一方、ICチップは磁気ストライプよりも多くの情報を持ち、暗号化もされています。偽造が難しいシステムのため、スキミングもされにくい仕組みです。
ICチップ併用のカードの場合、暗証番号を含む大切な情報はICチップに搭載されています。カードの偽造を防ぐには、IC化が欠かせないといえるでしょう。
暗証番号による本人確認で安心、スピード決済
ICチップによる決済では、原則「クレジットカード発行時に設定した4桁の暗証番号」による本人確認を採用しています。サインのみでの取り引きが行われず、より安全性が高い決済方法です。
端末のボタンを押して暗証番号を入力するだけなのでスムーズに決済ができ、ペンで伝票にサインする手間もかかりません。
カードを落としたときのセキュリティにも役立っています。カードを拾ったとしても、暗証番号による決済は番号を知っている人にしかできません。暗証番号不要の少額決済はありますが、万が一のときにも被害が小さくて済むでしょう。
IC化によるメリット、デメリットは?
クレジットカードのIC化は、メリットとデメリットがあります。個人がセキュリティに気を使うことで、ICチップが持つメリットを最大限に生かせるでしょう。
磁気不良の影響を受けにくい
磁気不良とは、「磁気ストライプに使われている磁性体が磁気の影響を受けて故障すること」です。ICチップなしのカードでは、磁気ストライプが故障すると店でのカード決済ができなくなります。
ICチップには磁気ストライプのような磁性体が使われていないため、磁気の影響を受けにくいのか特徴です。ただしICチップは静電気に弱く、磁気が発生しやすい電気機器に近づけると故障の可能性があります。
今まで磁気不良に悩まされていた人は、故障につながる要因が変わることで問題が解消されるかもしれません。
また、ICチップと磁気ストライプが搭載されていることで、もしどちらかが故障したとしても違う決済方法で利用できるのはメリットといえるでしょう。
暗証番号のより厳重な管理が必要
ICチップなしのカードは、カードでお金を借りるときやローンを利用するときに暗証番号を使います。しかし、ICカードは店での決済にも暗証番号を使うため、カードでショッピングをする人にもリスクがあるのです。
「会員の故意や過失で暗証番号が漏れたことによる不正利用」は、基本的にカード会社の規約により補償の対象外となっています。
特に、暗証番号が簡単に推測できるものであったり、カードと一緒にメモを入れていたりすると補償される可能性は低くなります。家族や知人であっても暗証番号は教えず、しっかり管理しましょう。
各カード会社における安全への取り組み
カード会社はIC義務化の法律により、安全への取り組みを強化しています。ICチップなしのカードは切り替えが進んでおり、有効期限前でも交換に対応している会社も多いでしょう。また、ICチップを利用した「非接触EMV」も、普及が進んでいます。
ICチップなしカードは搭載型に切り替え
現状、ほとんどのクレジットカードはICチップ搭載のものに切り替わっています。しかし、カード会社に住所を伝え忘れていたり、有効期限前で切り替わっていないカードを持っていたりする場合は、切り替えを検討しましょう。
多くのカード会社は、ICチップなしからICチップ搭載型への切り替えを推進しています。利用しているカード会社に問い合わせてみましょう。
ただし、「国際ブランド付きプリペイドカード」は、IC義務化の対象外です。しかし、プリペイドカードの中にも「Kyash(キャッシュ)」のようにIC化を進めているものもあります。
セキュリティを意識する場合は、IC搭載型を扱う会社を選ぶのもよいでしょう。店の決済端末は磁気決済にも対応しているため、ICチップなしのプリペイドカードも使えます。
非接触EMVの普及も推進されている
非接触EMVとは、「クレジットカードに搭載されたタッチ決済システム」です。「Visaのタッチ決済」や、「MasterCardコンタクトレス」が該当します。
Europay、Mastercard、VISAの頭文字を取った「EMV」は国際規格で、日本のカードを含めICカードはEMVの規格を満たしています。
カードを端末にかざすだけで決済が完了するので、現金払いやICチップ決済よりも短時間で支払いができ便利です。
暗証番号の入力やサインも必要ありません。暗証番号をのぞき見されるリスクや、カードの受け渡しによるスキミング被害も防げるでしょう。
まとめ
日本では、22年を目標にクレジットカードの完全IC化が進められています。ICチップなしのカードが消えつつあるのは、IC義務化の法律によるものです。
プリペイドカードなど一部のカードがIC決済に対応していないことや、海外でのIC普及状況からクレジットカードには磁気ストライプが併用されています。
ICチップなしのカードを持っている場合は、セキュリティ面からもICチップ搭載のカードに切り替えを検討しましょう。