クレジットカードの総量規制とは
クレジットカードのキャッシング(借入れ)を利用しようとして、お金が引き出せなかった経験はありませんか?クレジットカードの「キャッシング枠」は貸金業法における「総量規制」の対象です。本規制の詳しい内容とルールを確認しましょう。
主に「貸金業法」の「過剰貸付等の禁止」のこと
日本には、貸金業者からの借入れについて定めた「貸金業法」という法律があります。「総量規制」は貸金業法の中の一つで、「過剰貸付け等の禁止」の第十三条の二に内容が記されています。
一言でいうと、総量規制は「借りすぎ・貸しすぎ」を防止する法令です。具体的には、貸金業からの借入れ額が年収の3分の1を超える場合は、新たな借入れができなくなります。既に借金がある人に対して、年収の3分の1までの返済を求めるものではありません。
違反するとカード会社が処分を受ける
総量規制の対象となる貸付けは、「貸金業者による個人への貸付け(個人事業主を含む)」です。そもそも「貸金業者」とはどんな業者を指すのでしょうか?
・個人に貸付けを行う消費者金融
・事業資金を貸付ける事業者金融
・クレジットカード会社
貸金業者とは、個人や事業者に主に貸付け業務をメインに行うノンバンクを指します。銀行や信用金庫も融資を行っていますが、貸金業者には含まれません。ノンバンクは「貸金業法」、銀行は「銀行法」という異なるルールに基づいて業務を行います。
クレジットカードには、カードでお金の借入れができる「キャッシング枠」があります。総量規制の対象とされ、仮に過剰な貸付けを行った場合はカード会社に登録の取消や営業停止といった罰則が科せられるでしょう。
審査で総量規制オーバーが分かるのはなぜ?
クレジットカードの入会審査や途上与信では、個人の年収や借入れ状況の調査が行われます。「借入れ残高が年収の3分の1を超えているかどうかは、どうやって調べるの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
日本には個人の信用情報を管理する三つの「信用情報機関」があります。信用情報とは、クレジットやローンの契約及び申し込みに関する情報のことです。
・株式会社シー・アイ・シー(CIC)
・株式会社日本信用情報機構(JICC)
・全国銀行個人信用情報センター(KSC)
信用情報は、加盟会社である「銀行」「信販会社」「カード会社」などによって上記の機関に提供され、ほかの加盟会社とも共有されています。つまり、カード会社は入会審査や途上与信のたびに、信用情報機関で情報を照会しているのです。
三つの機関は「CRIN」と呼ばれるネットワークによって情報交換を行っているため、CICに加盟するカード会社が、JICCに登録されている情報を入手することも可能です。
年収の3分の1を超える貸付けとは
総量規制の基準となる「年収」には、「定期的」であることを前提に以下が含まれます。
・給与
・年金
・恩給
・不動産の賃貸収入(事業として行う場合以外)
・年間の事業所得
対象となる主な借入金は、消費者金融・事業者金融からの「カードローン」やクレジットカードによる「キャッシング」です。
例えば、給与が300万円の場合、借入れができるのは100万円まで、既に50万円のカードローンがある場合は、50万円までとなります。
貸金業法のおかげで安心して利用できる
総量規制の目的は、返済能力を超える過剰な借入れを防止することです。2006年に貸金業法の改正が行われ、総量規制が盛り込まれた法律が10年から完全施行されました。抜本的な法改正が行われたおかげで、私達はより安心して貸金業者が利用できるようになったのです。
法改正の背景には多重債務問題があった
貸金業法改正が行われた背景には「多重債務問題」の深刻化があります。当時は5件以上から借入れを行う多重債務者や、経済・生活苦を理由とする自殺者が後を絶たず、社会問題となっていました。
「高金利」や「貸金業者による過剰な貸付け」「金利負担を認識しにくい返済システム」などが多重債務の直接の原因として挙げられ、抜本的な法の見直しが必要と判断されたのです。
・金利体系の適正化(上限金利の引き下げ)
・貸金業の適正化(参入規制・行為規制の強化)
・過剰貸付けの抑制(総量規制の導入)
・ヤミ金融対策の強化
貸金業法の施行後は、多重債務者や自己破産者の割合が大きく減少しています。
一定額以上の借入れは収入証明が必要
貸金業法の「返済能力の調査(第十三条)」において、以下のいずれかに当てはまる場合は「収入証明書」の提出が求められます。
・当該貸金業者での借入れの合算額が50万円を超える場合
・個人顧客の借入れの合算額が合計100万円を超える場合
1社での借入れ額が50万円以下、または複数社での借入れ額の合算が100万円以下の場合は提出の必要はありません。貸金業者は、利用者から提出される書類を基に「総量規制」に抵触していないかを確認します。
以下は、法令で「収入証明書」として認められている書類の一例です。
・給与明細
・支払調書
・源泉徴収票
・確定申告書
・青色申告決算書
・納税通知書・納税証明書
・年金通知書・年金証書
貸金業法の総量規制の対象外となるもの
ローンと名の付くものでも、貸金業法の総量規制の対象外となる取引が存在します。クレジットカードは、貸金業法と割賦販売法の二つの法令が適用となるため、両者の違いを確認しておきましょう。
ショッピング取引
クレジットカードには、ショッピングやサービス利用の代金をカード会社に立て替えてもらえる「ショッピング枠」と、カードで現金の借入れができる「キャッシング枠」があります。
このうち、ショッピング枠は「総量規制の対象外」です。リボ払い・分割払い・ボーナス払いについては、「割賦販売法」が適用となります。
割賦販売法では、カードの発行時に「支払可能見込額」を算定することが法律で義務付けられています。支払可能見込額以上のクレジット契約は原則的に認められていません。
・支払可能見込額=年収-生活維持費-クレジット債務×0.9
「年収」はカード申し込み者の自己申告で、「生活維持費」は経済産業省令で定められた金額が採用されます。「クレジット債務(年間)」については、カード会社が信用情報機関にて情報の照会を行います。
銀行カードローンや住宅ローン等
貸金業法は貸金業者に対する法令のため、銀行カードローンは総量規制の対象外です。ただし、借入れ上限がないわけではありません。銀行の自主規制ルールにより、返済能力を超える過剰な貸付けは行われないのです。
その理由には、貸金業法の施行後に銀行カードローンの貸付け残高が上昇し、多重債務や自己破産問題が増加したことが関係しています。日本弁護士連合会より、「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書」が金融庁に提出されたのです。
また、「ローン」と名の付くもの全てが総量規制の対象になるとは限りません。以下は総量規制の「除外貸付け」に分類されています。
・住宅ローン
・自動車ローン
・高額療養費の貸付け
・有価証券を担保とする貸付け
・不動産を担保とする貸付け
・売却予定不動産の売却代金で返済される貸付け
分割払い形式でスマホなどの商品を購入する「割賦契約」も、総量規制の対象外です。
まとめ
クレジットカードによるキャッシングは総量規制の対象です。消費者金融や事業者金融で借入れをしている人は、カードキャッシングの上限を確認しておきましょう。年収の3分の1を超える借入れは、法律により禁じられています。
一方で、総量規制の対象外になる借入れも多く存在します。銀行の借入れや住宅ローンは規制の対象外ですが、利用時は返済計画をしっかり立てることが重要です。