クレジットカードの遅延損害金とは
クレジットカードには締め日と支払い日があります。締め日までの約1カ月間のカード利用金額が、支払い日に指定口座から引き落とされる仕組みですが、引き落としができなかった場合には損害賠償金が発生します。
支払い遅れにより発生する損害賠償金
「遅延損害金」とは、債務の支払い義務を怠ったときに発生する賠償損害金を指します。本来支払うべきお金を約束の期日に返済しない場合に生じるペナルティと考えましょう。
クレジットカードの場合、「毎月のカードの引き落とし日」に指定の口座に入金がない、または残金が足りない際に発生します。
カード利用者は理由の如何を問わず、クレジットカード契約で定められた利率の遅延損害金をカード会社に支払うのがルールです。
カード会社にもよりますが、一般的に「支払い金額に対して年率〇%」という形で決められています。「年率(年利)」とは、1年あたりに支払う利率です。
遅延損害金はいつからかかる?
遅延損害金は「支払い日(返済日)の翌日」から、支払いが完了するまで日割り計算で加算されていきます。
三井住友カードを例に挙げてみましょう。利用規約には、カードショッピングの遅延損害金の発生について「支払金(付利単位1000円)の支払いを遅滞したときは、支払期日の翌日から完済の日まで…」と記載があります。
三井住友カードは10日または26日が支払い日なので、遅延損害金が発生するのは11日または27日からです。
また、1回払い以外の支払い方法を選択していた場合は、分割支払金の合計の残金金額(付利単位1000円)に対し遅延損害金が生じます。
遅延損害金の計算方法
支払い日を過ぎると、どのように遅延損害金が加算されていくのでしょうか?JCBカードの利率を例に挙げて、実際に計算してみましょう。支払い金額が大きければ大きいほど、滞納期間が長ければ長いほど、遅延損害金は大きくなります。
元金、利率、延滞日数を使って計算する
利率はカード会社ごとに異なりますが、遅延損害金の計算方法はどのカード会社でも同じです。カードにかかわらず、ローン全般に共通する計算式のため、覚えておくようにしましょう。
・遅延損害金=元金× 遅延損害金利率(年利) ÷365日(うるう年は366)×延滞日数
分割払いやリボ払いをすると、一定の利息が付きます。利息と遅延損害金はまったくの別物であることを覚えておきましょう。
「利息」はお金の貸し借りをした際に生じる対価で、返済日までの借入金に対して発生します。一方、遅延損害金は「返済日の翌日以降」に生じるものなので、両者が二重に請求されることはありません。
JCBカードの利率と計算例
JCBカードにおける「ショッピング1回払い」及び「ショッピングリボ払い」は、年率14.6%です。元金が15万円で、遅延日数が15日だった場合の計算式は以下のようになります。
・遅延損害金=15万円×14.6%÷365日×15日
15日遅れた場合の遅延損害金は900円です。1日遅れると60円の遅延損害金が発生するため、30日では1800円、60日では3600円を支払わなければならない計算です。
発生した遅延損害金は、翌々月以降の支払い日にその他のカード利用分と合わせて請求されます。
遅延損害金の利率
遅延損害金の利率はカード会社によって異なりますが、「上限」は法律によって決められています。カード会社の約款に特段の定めがないときは、法定利率が適用になると考えましょう。
利率の上限は法律で決められている
遅延損害金の上限は、「利息制限法」で定める「上限利息」の1.46倍です。
例えば、借入金が10万円未満のときの上限利息は年2割(20%)と規定されており、この1.46倍にあたる29.2%が遅延損害金の上限となります。
・10万円未満(上限利息20%):年率29.2%
・10万円以上100万円(18%):26.28%
・100万円以上(15%):21.9%
「元本の返済と利息の支払いだけで精一杯」という人もいますが、カード会社の利用規約に定めがある以上、遅延損害金は支払わなければなりません。
なお、2020年4月1日に民法の改正が行われ、法定利率のルールが見直されました。約款に定めがない場合は、法定利率である3%が採用されます。
法定利率は3年ごとに変動するルールのため、「法定利率に従う」と記載があるときや、特段の定めがないときは、法定利率が変動するたびに影響を受けることになるでしょう。
分割払いの場合
「分割払い」とは、本来一括で支払うべきショッピング利用額を3回以上に分けて支払う方法を指します。商品代金の支払いが先延ばしにできる分、分割手数料(利息)を毎回カード会社に支払わなければならない仕組みです。
分割払いの支払いを遅延した場合も、遅延損害金が発生します。JCBカードの利用規約を見てみましょう。
遅延損害金の条項には、「分割支払金のうち分割支払元金に対し約定支払日の翌日から完済まで年14.60%を乗じた金額」「分割払い残元金に法定利率を乗じた額を超えない金額」と記載されています。
年率はカード会社によって異なります。特段の定めがない場合は法定年率(3%)が採用されますが、ほとんどのカード会社では「約定利率」を定めています。
多くの遅延損害金を払わなくて済む方法は?
1日でも早く支払いを済ませることが、遅延損害金を最小限に抑える唯一の方法です。支払い日以降の対応はカード会社によって異なるため、カスタマーサポートに連絡するか、カード会員Webサイトを確認しましょう。
支払い金額と入金方法を確認してすぐ入金
支払い期日を過ぎると、1日ごとに遅延損害金が加算されていきます。支払い金額と入金方法を確認して、一刻も早く返済するように努めましょう。
JCBカードは、カード発行元によって返済方法が異なるため、まずはカード裏面に記載された電話番号に連絡をします。
三菱UFJニコスのMUFGカードは、引き落とし口座を設定している金融機関によっては再度引き落としが行われるので、その場合は口座に入金すればOKです。「カードご利用代金に関するご案内」が郵送で届いた場合には、案内に従って振り込みましょう。
三井住友カードの場合、カード会員Webサイト「Vpass」にて詳細が確認できます。
クレジットカードは個人の信用に基づく取引です。「長期の入院が必要になった」「預金口座にお金がない」などの事情がある場合は、早めにカード会社に連絡を入れる必要があります。
支払いにかかる手数料も発生
支払い延滞で発生するのは、遅延損害金だけではありません。
・元金(カード利用金額)
・遅延損害金
・振り込み手数料
支払い口座からの再引き落としが行われない場合、カード会社が指定した金融機関に金額を振り込みます。その際に発生する「振り込み手数料」や「コンビニ決済手数料」もカード利用者の負担です。
支払いが1日遅れただけで数百円の手数料がかかるのは、もったいないといわざるを得ません。
遅延損害金はその場で振り込むのではなく、翌月や翌々月のカード利用金額と一緒に請求されるケースが多いでしょう。
再振替がある場合は間に合うように入金
カード会社によっては「再振替サービス(自動再引き落とし)」を行うところもあります。再振替の場合、指定された日までに口座に入金を行えば、自動的に引き落としが行われます。基本的にカード会社に連絡をする必要はありません。
楽天カードでは、「対象の金融機関の口座」を支払い口座に指定している場合のみ、指定日に再振替が行われます。毎月のスケジュールはWebサイトで確認しましょう。
三井住友カードの場合、支払い日や銀行によって再振替の可否が異なります。支払い日が10・26日のカードは再振替の対象ですが、6日・8日のカードは、金融機関に関係なく、再振替が行われません。
支払い口座を「三井住友銀行」または「みずほ銀行」に指定している場合、「再引き落としの期間」であれば、再振替は毎営業日行われます。その他の金融機関は、再振替日が指定されているため、その日までに忘れずに入金を行いましょう。
日ごろから締め日と支払い日を意識する
支払い遅延を防ぐには、日ごろから「締め日」と「支払い日」をきちんと把握しておくことが重要です。
・締め日:カード会社でカード利用代金を締め切り、集計を行う日
・支払い日:締め日で集計した金額を利用者の支払い口座から引き落とす日
支払い日が土日・祝日に重なる場合は、翌営業日にずれるケースが大半です。ただ、休日前に引き落としになる金融機関もゼロではないため、利用規約を確認しておきましょう。
例えば、15日締め・翌月10日支払いのクレジットカードでは、前月16日~当月15日までの利用代金が翌月の10日に引き落とされることを意味します。少なくとも前の日までに口座への入金を済ませましょう。
支払い日の当日に入金した場合、引き落としに間に合わない可能性があります。
遅延損害金を支払えばおとがめなし?
「支払いが遅れても、遅延損害金さえ支払えばいい」と考えるのは間違いです。
カード会社のシステムに延滞の事実が記録されるだけでなく、ほかのカード会社や金融機関にも広く共有されることになります。最終的には「強制解約」もあり得るでしょう。
個人信用情報に影響がある
クレジットカードは個人の信用を担保にして成り立っています。支払い遅延が長引いたり、何度も遅延が繰り返されたりした場合、カード会社からの信用を損なう恐れがあるでしょう。
カード会社の内部で「返済能力に問題がある」と見なされるだけでなく、下記の「信用情報機関」に延滞の事実が記録され、多くのカード会社に共有されることになります。
・株式会社シー・アイ・シー(CIC)
・日本信用情報機構(JICC)
・全国銀行個人信用情報センター(KSC)
CICの場合、滞納期間が61日または3カ月目になると、「異動情報」としてシステムに記録されます。
信用情報機関は、カード会社や信販会社、金融機関などが加盟する機関です。カード会社では入会審査や途上与信の際、信用情報機関で個人情報を照会し、「カードを発行しても問題がないか」を調査します。
異動情報が信用情報機関に登録されると、他社にも情報が共有されます。結果として、カードの新規発行やローン審査で不利になってしまうでしょう。
利用枠の減額や更新不可の可能性あり
カード会社が恐れているのは、立て替えしたお金が返ってこない「貸し倒れ」です。延滞が続くと、カード会社は「支払い能力がない」と見なします。お金が回収できないリスク軽減のため、「カード利用可能枠の減枠」を行う可能性は高いでしょう。
利用可能枠とは、1枚のカードで使える「限度額」のことです。多くのカード会社は信用情報機関を通して、個人の信用情報を共有しているため、1社のカードが減枠されれば、ほかの会社のカードも減枠されると考えた方がよいでしょう。
また、カードには3~5年の有効期限があります。期限を迎えると「再審査」が行われ、審査にクリアした場合のみカードが更新されます。支払い遅延がある人はカードの更新がされない可能性が高いでしょう。
延滞を繰り返すと強制解約もあり得る
延滞を繰り返したり、未払い期間が長引いたりすると、場合によっては「カードの強制解約」の措置が取られます。
強制解約が行われると、同じカード会社では二度とカードがつくれなくなります。さらに、ほかのカード会社で新しくカードをつくろうと思っても、審査に落ちる可能性が極めて高いでしょう。いわゆる「ブラックリスト入り」の状態です。
強制解約になる目安は公開されていませんが、2カ月程度の延滞でも解約に至るケースがあるようです。
まとめ
お金がなくても支払いができるクレジットカードの便利さが当たり前になると、「カード会社が代金を立て替えてくれている」という事実を忘れてしまうかもしれません。
しかし「1週間程度の遅れなら問題ないだろう」「1回くらいなら許されるだろう」という考えの甘さが、1カ月の延滞を生むのです。
遅延損害金がかかるだけでなく、将来的にカードがつくれなくなるというリスクもはらんでいるため、支払い日はきっちり守りましょう。
やむを得ない事情で支払いができない場合は、事前にカード会社に連絡をして、「支払いの意思」や「誠意」を見せることが重要です。