- クレジットカード発行会社のビジネスモデル
- クレジットカード関連会社の役割
- それぞれにメリットがある
- 信用で成り立っている
- カード会員や加盟店からの手数料が主な収益
- 発行、加盟店数の増加で収益UPが見込める
- 他にも、幅広くサービスを展開
- 保険の代理店業務で手数料を受け取る
- 広告掲載による収入
- 加盟店手数料とは
- お店がクレジット売上の一部を支払う
- アクワイアラを通して国際ブランド等に流れる
- カード会員が支払う手数料の種類
- 分割払いの手数料
- リボ払いの手数料
- キャッシングの利息
- 海外で利用したときの手数料
- 年会費無料のカードがある理由
- 年会費はステータス、特典により差がある
- 年会費無料カードは初めてでも発行しやすい
- クレジットカード決済でポイントがつく理由
- カード会員の利用を促し、収益につなげる
- 有効期限や最低交換数に注意
- まとめ
クレジットカード発行会社のビジネスモデル
1枚のカードさえあれば、どこでもショッピングができる「クレジットカードの仕組み」を不思議に思ったことはないでしょうか?クレジットカードは、カード利用者・加盟店・カード会社の「信頼関係」によって成り立っています。
クレジットカード関連会社の役割
クレジットカード関連会社が担う役割は「イシュイング」「アクワイアリング」「プロセシング」の三つです。一つの企業がすべての業務をこなすケースもあれば、一部を外部に委託するケースもあります。
・イシュイング(イシュア):カードの発行業務
・アクワイアリング(アクワイアラ):カード加盟店の開拓・管理
・プロセシング:カード会員管理や加盟店管理に関する業務
一言でいえば、イシュアは「消費者側に立つ組織」で、アクワイアラは「加盟店側に立つ組織」です。日本では同じ組織がアクワイアラとイシュアの両方の役割を担うことが多いようです。
また、カード会社にクレジットカードの決済機能を提供する組織を「国際ブランド」と呼びます。現在のところ、世界にある国際ブランドは、Visa・Mastercard・JCB・アメックス・銀聯・Discover・Diners Clubの7社のみで、中でもVisaとMastercardが高いシェアを占めています。
それぞれにメリットがある
クレジットカードの利用には、「カード利用者」「カード加盟店(店舗)」「カード会社」の3者が関与しており、それぞれがメリットを得ています。
カードを発行すると、カード利用者は手元にお金がなくても商品が購入できるようになります。これは、カード会社(アクワイアラ)が利用者に代わって商品代金を立て替えるためです。
一方、現金払いの店舗がクレジットカードを導入すると「集客力アップ」が見込める上、現金の受け渡しによるミスや盗難リスクが減少します。利用者に代金を請求する必要がなく、カード会社を通してスムーズに売上金が得られるのもメリットでしょう。
カード会社はというと、利用者とカード加盟店の仲を取り持つ代わりに、カード加盟店から「加盟店手数料」、カード利用者からは「年会費」「各種手数料」をもらっています。
信用で成り立っている
クレジットカードは、あるアメリカの実業家がレストランで食事をした際、財布を忘れて不便な思いをしたことから「ツケ払い」できるカードをつくったのが始まりといわれています。
日本にカードが導入された当初は、「収入」「暮らしの安定性」「将来性」の3点がそろった「社会的信用の高い人」に対してのみ発行されていたようです。
英語の「クレジット(credit)」には「信用」という意味があります。現代のカードの入会審査ではカード利用者の「返済能力の有無」や「社会的な信用性」が審査され、問題がないと認められた場合にカードが発行されます。
カード会社がもっとも恐れるのは、利用者がカード料金を支払えずに自己破産する「貸し倒れ」です。「継続的な収入がない」「勤続年数が浅い」「支払いを滞納している」といった人に対しては、カードが発行されない可能性が高いでしょう。
カード会員や加盟店からの手数料が主な収益
カード会社の主な収入源は、カード会員や加盟店からの「手数料」です。
カード会員が支払う手数料には、「分割払い手数料」「リボ払い手数料」「キャッシング手数料」などがあります。1回払いや2回払いを選択した場合、カード会員が負担する手数料はありません。
一方で、カード加盟店側は、回数や支払い方法にかかわらず、カード会社に手数料を支払います。この「加盟店手数料」はカード会社の収益の中でもかなり大きな割合を占めると考えてよいでしょう。加盟店には「実店舗」「オンライン」の両方が含まれます。
決済金額や業種によっておおよその割合が決まっていますが、基本的に加盟店とクレジットカード会社の個別契約となるため、手数料は一律ではありません。
発行、加盟店数の増加で収益UPが見込める
カード会社の収益を左右するのは、「カードの発行枚数」と「加盟店数」です。手数料の収入が大きな割合を占めるカード会社にとって、「いかに多くの顧客や加盟店を獲得できるか」は生命線ともいえるでしょう。
カード会社では、カード利用者や加盟店を獲得するためのさまざまな活動を行っています。例えば、「JCB」は、カードの決済機能を提供する「国際ブランド」でありながら、イシュイング・アクワイアリング・プロセシングのすべてを自社で行っているのが特徴です。
国内最大級の加盟店ネットワーク網を構築しており、加盟店に対しては販売促進や集客、決済の利便性においてきめ細やかなサポートを行っています。
また、トラベルデスクやポイント優待店の充実など、日本人が望む「独自の価値」をカードに付帯させることにより、カード利用者の獲得にも成功しています。
他にも、幅広くサービスを展開
カード会社の収益は、カード会員や加盟店から得る手数料だけではありません。多くの会員を保有するカード会社ならではの強みを生かし、「保険の代理店業務」や「広告掲載業務」によっても、収益を上げています。
保険の代理店業務で手数料を受け取る
カード会社の中には「保険会社の代理店」として、収益を得ているところもあります。生命保険・損害保険・医療保険などの契約を獲得すると、保険会社から代理店に対して一定額の手数料(報酬)が支払われる仕組みです。
例えば、JCBではJCB会員へのサービスの一環として、40年以上にわたる総合保険代理店業務を担っています。三井住友カードも2017年6月30日より保険代理店として、カード会員に生命保険や医療保険を案内する業務を開始しています。
広告掲載による収入
「広告掲載」で収入を得ているカード会社も少なくありません。DM(ダイレクトメール)・有料会員誌・Web広告・メール広告といった方法で他社の商品やサービスをカード会員に宣伝し、一定の「広告料」を得ているのです。
多くのカード会社は「ポイントアップモール」と呼ばれるポイント優待サイトを持っています。カード会員がモールに掲載されている広告をクリックして買い物をした場合に一定のポイントを付与するサービスです。
「モールを経由するだけでなぜポイントが付くの?」と不思議に思う人もいるかもしれませんが、ポイントの出どころは、カード会社が広告主から得た「広告料」です。
企業や店舗は、広告料を支払ってモールに広告を掲載しており、カード会員がモール経由で買い物をすると、広告料の一部が運営者から還元される仕組みになっています。
加盟店手数料とは
カード加盟店は、カード会社に対してどのくらいの「加盟店手数料」を支払っているのでしょうか?クレジット関連会社における、加盟店手数料の流れや分配についても理解を深めましょう。
お店がクレジット売上の一部を支払う
カード加盟店がカード会社に対して支払う手数料は「加盟店手数料」と呼ばれます。カード決済におけるカード利用者の手数料負担はありませんが、加盟店はクレジット売上の一部をカード会社に支払う必要があります。
加盟店側は手数料がかかるからといって、手数料分を上乗せした金額をカード利用者に請求することはできません。「加盟店の禁止行為」の一つとして加盟店規約に記されていることがほとんどです。
加盟店手数料の相場は1~10%で、業種によって開きがあります。加盟店の年間売上高によっても差異があり、個人経営の店舗は全国チェーン店よりも手数料率が高くなる傾向があるようです。
とりわけ、クラブやバーなどのような「利益率が高い業種」や「未回収率が高い業種」では、加盟手数料が多くなります。
アクワイアラを通して国際ブランド等に流れる
加盟店から得た手数料のすべてがカード会社の収益になるわけではありません。手数料は「アクワイアラ」が受け取り、「イシュア」へと分配されます。
経済産業省が公開している「キャッシュレス・ビジョン」によると、アクワイアラよりもイシュアのほうに手数料が多く流れているようです。
さらに、アクワイアラやイシュアは、「各国際ブランドの決済インフラ」を利用しているため、国際ブランドに対して、0.05%程度のライセンスフィー及びネットワーク利用料を支払っています。
カード会員が支払う手数料の種類
「分割払い」「リボ払い」「キャッシング」「海外での利用」には、所定の手数料が上乗せされます。手数料が不要なのは、国内でのショッピング1回払い・2回払いのみと考えましょう。
分割払いの手数料
「分割払い」とは、利用額を3回以上に分割して支払う方法です。1回払いと2回払いは手数料がかかりませんが、3回以上では、支払いごとに「分割払い手数料」が上乗せされます。
・手数料=利用金額×100円あたりの手数料額÷100
・支払い総額=利用金額+手数料
・月々の支払い額=支払い総額÷支払い回数
「100円あたりの手数料」は各カード会社の利用規約を確認しましょう。支払い回数は3~36回が一般的です。
分割払いには、「毎月の支払い負担が軽減できる」というメリットがあります。「支払い総額」と「支払い回数」が最初に決まるため、支払い完了までの期間がダラダラと延びることがありません。リボ払いに比べて返済の目途も付きやすいでしょう。
リボ払いの手数料
「リボ払い」とは、買い物の回数や金額に関係なく、月々の支払い額がほぼ一定になる方法です。高額な買い物をしても無理なく返済できる点はメリットですが、「リボ払い手数料」が上乗せされるため、総支払い額は商品代金よりも多くなります。
・リボ払い手数料=リボ利用残高×金利(15%)×利用日数÷365日(うるう年は366日)
手数料の実質年率はカード会社ごとに異なりますが、15%前後が一般的でしょう。リボ払いの実質年率15%のカードで10万円を利用した場合、1回目(30日間)のリボ払い手数料は、1232円(10万円×15%×30日÷365日)です。
リボ利用残高は支払いが進むごとに減りますが、新規にリボ払いで買い物をすれば残高は増えていきます。利用残高が増えれば返済期間が長くなり、手数料の負担も大きくなってしまうのです。
月々の返済方法は、手数料と元金の合計を定額にする「元利定額方式」と、定額の元金に手数料をプラスする「元金定額方式」の2パターンがあります。
キャッシングの利息
クレジットカードには、カードでお金の借り入れができる「キャッシング枠」があります。国内はもちろん、海外のATMでも現地通貨が引き出せるため、急にお金が必要になった場合に役立つでしょう。
キャッシングを利用すると「利息」がかかります。年利は利息制限法で「上限」が決まっており、元金が10万円未満の場合は年20%、10~100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%です。
キャッシング(一括払い)の利息=借り入れ金額×年利×借り入れ日数÷365(うるう年は366日)
年利18%のカードで、10万円をキャッシングして30日後に返済する場合、利息は1479円(10万円×18%×30日÷365日)です。
海外で利用したときの手数料
海外でカード決済をすると、1回払いでも「手数料」がかかる仕組みです。
・手数料=利用金額(外貨)×国際ブランドの基準レート×カード会社ごとの海外事務手数料(%)
円とドル、円と人民元といったように、単位が異なる通貨は「為替レート」に基づいて交換が行われます。本来、為替レートは常に変動していますが、換算しやすいように各国際ブランドでは「1日の基準レート」を定めています。詳細は各国際ブランドのWebサイトで確認しましょう。
「海外事務手数料」は、カード会社が外貨を日本円に両替するときの事務処理コストです。三井住友カードの場合は、VisaやMastercardの事務処理手数料率は2.2%、銀聯カードは2.5%です。
年会費無料のカードがある理由
クレジットカードには「年会費がかかるもの」と「かからないもの」があります。年会費はカード会社の重要な収益の一つですが、なぜ、年会費が無料のカードが存在するのでしょうか?
年会費はステータス、特典により差がある
クレジットカードを利用するために、会員が毎年カード会社に支払うお金を「年会費」と呼びます。「加盟店からの手数料」「カード利用の各種手数料」「年会費」の三つがカード会社の主な収益といってよいでしょう。
年会費は「ステータスの高さ」に比例します。ステータスとはクレジットカードの格付けのことで、一般→ゴールド→プラチナ→ブラックの順番に高くなります。上位カードは年会費が高い分、付帯する特典やサービスも手厚いのが特徴です。
同じステータスのカードでも、カード会社によって年会費に差が出ることがあります。カードを選ぶ際は年会費の安さだけで決めてしまわずに、付帯特典やサービスを比較するようにしましょう。
「Web明細への切り替え」「年1回以上の利用」などの条件をクリアすると、年会費が優待または免除されるものもあります。
年会費無料カードは初めてでも発行しやすい
「楽天カード」や「ヤフーカード」など、年会費が完全無料のクレジットカードもあります。
無料カードのステータスは大半が「一般カード」で、入会審査のハードルはそれほど高くありません。カードを初めてつくる人でも気軽に申し込みやすく、維持しやすいのがメリットでしょう。
「年会費が無料でもカード会社の運営は成り立つのか?」と疑問に思う人もいますが、カード会社の売上の大部分は「手数料」です。年会費無料のカードで新規契約者を獲得すれば、その分徴収できる各種手数料も増えることになります。
JCBによる「クレジットカードに関する総合調査」によると、2020年における日本人のカード保有率は約87%です。カード会社では、年会費が無料のカードを設定することで、残りの13%の人々を「新規利用者」として獲得したいのです。
【クレジットカードに関する総合調査】2020年版調査結果レポート
クレジットカード決済でポイントがつく理由
カード決済をすると、決済額に応じた「カード会社のポイント」が付与されます。一般的なカードのポイント還元率は0.5%前後で、1%を超えると「高還元率カード」と呼ばれるようになります。「カード会社が利用者にポイントを還元する理由」を考えてみましょう。
カード会員の利用を促し、収益につなげる
カードでポイントが付く理由は、「カード会員のカード利用」を促すためです。ポイント還元があると、会員はカードを積極的に利用するようになります。カードを利用すれば、「各種手数料」の売上が増え、最終的にカード会社の収益につながるのです。
例えば、1万円のカード決済をした場合、加盟店から5%の決済手数料がカード会社に支払われるとしましょう。このうちの1%をカード利用者に還元したとしても、カード会社では4%の利益が得られます。
カード会員の中には「ポイント還元キャンペーン」と聞くと、「今、買わないと損する」と感じて、財布の紐が緩んでしまう人がいます。お得なキャンペーンを定期的に行うことで、カード会員のカード利用を促すのもカード会社の作戦です。
有効期限や最低交換数に注意
ポイントには「有効期限」や「最低交換数」が設定されています。ポイントを「無期限」「最低交換数なし」にするとカード会社が損をしてしまうため、あえてルールを設けているのです。
一般的に、高還元率カードはポイントの有効期限が短い傾向があります。例えば、「Orico Card THE POINT」の標準還元率は1%で、入会後6カ月後は還元率が2倍にアップします。
ポイントはスピーディに貯まりますが、有効期限が1年間(加算月を含めて12カ月後の月末)しかないため、人によっては失効のリスクがあるでしょう。
また、最低交換数が高く設定されている場合も、せっかく貯めたポイントを使い切れない可能性があります。
まとめ
カード会社の主な収益は、各種手数料・年会費・広告費・保険代理店業務の報酬など多岐にわたります。
中でも「手数料」は収益の大分部分を占めています。「カード会員」「カード利用回数」「カード加盟店」が増えれば増えるほど、カード会社の収益が上がるということを覚えておきましょう。
「ポイント還元」や「年会費の免除」は、カード利用者にだけメリットがあるように思われがちですが、実は、「新規顧客を獲得して売上につなげる」というカード会社の作戦でもあるのです。